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大理石の表面

​ローカル・ガバナンス研究会

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ロンドン ハマースミス・フラム区の写真

ローカル・ガバナンス(Local Governance)とは?

 

 日々の生活の中で、いかに私たちは統治されているのか。これがローカル・ガバナンスの基本テーマである。ガバナンスは社会的な調整であり、階統制(トップダウン型の命令)、市場(需要と供給、競争)、ネットワーク(組織間、部門間の調整、互酬と信頼)の3つの様式が配されている。

 ガバナンスという言葉が定着したものの、ローカル・ガバナンスとなれば、その捉え方や訳語は曖昧である。「ローカル」の意味について、英国の研究者であるヴィヴィアン・ラウンズ氏に尋ねたことがある。彼女の回答は、ローカルとは基礎自治体の意味だと明快に答えた。これは、ジョン・スチュワートの考えを踏襲したものであり、英国流の公共政策学の発想である。したがって、正確な訳語は、「自治体ガバナンス」ということになる。

 ローカル・ガバナンスが重要視される背景には、従来型の政府機構がどのように機能するかだけでなく、ステークホルダー(利害関係者)全体が公共のあり方にかかわって、政治行政の改善を図ろうとする協調のとれた政策への要請がある。ゆえに、ガバナンスのパラダイムは、政府のアクターと非政府のアクターの相互作用の下で協調した編制(arrangement)が特徴となる。意思決定が複雑化した中での統治のあり方を問う概念といえる。

 最近、英国では、「ローカル・ステート(Local State)」という議論がある。ローカル・ステートとは、住民の生命行政を実現する目的で、住民の統治機構を再編し、社会的アクターの自主性を尊重し関与させる形態である。

 ガバナンスの文脈においては、地方政府の政治的自律性は上位の政府から規制を受けがちになる。さらに、ローカル・ガバナンスのアクターが直面する大きな課題は、活動の機動力が、金融や資本のグローバルな市場の諸力よりも劣っていることである。地域社会の舵取りを行う場合、市民の利益に照らして、ローカル・ガバナンスの動機づけは相対的に希薄なものになりがちである。このような事情から、英国では、ローカル・ガバナンスからローカル・ステートへと、住民の意思を最大限に尊重し、住民の生命を守る基本事務(everyday local state)への志向を強めている。

​ 福祉国家の財政負担をめぐって、メディアで、「トラス・ショック」という言葉が引き合いに出される。これは、かつて英国のリズ・トラス首相が推進した減税政策に起因して、金融市場の混乱が生じた悪しき事象である。減税ポピュリズムは、短期的には支持を集められるものの、長期的には財政の健全性を損なうリスクが大きい。特に減税が財政赤字を拡大させる場合、特に日本の場合のように、将来的な経済成長に悪影響を及ぼす可能性がある。国家の税財政のあるべき基本は、財政の健全化を前提としつつ、持続可能な財政構造と経済成長のバランスを図ることである。中央の財政と地方への交付金のあり方は、ローカル・ガバナンス研究で注目されるテーマである。

研究会の目的と活動方針

【研究の目的】

 本研究会は、ローカル・ガバナンスの理論的・実証的研究を通じて、地方自治体の自律性と中央政府との協働のあり方を探究します。特に以下の3つを研究の柱としています。

 

1. 中央と地方の行財政関係

   地方財政制度、税財源配分、地方交付税制度などを通じた中央・地方関係の分析と、地方自治体の財政自主権の確立に向けた課題の検討

2. 中央と地方の福祉政策

   社会保障制度や社会福祉制度における国と地方の役割分担、福祉サービスの地域格差、地方自治体の福祉政策の自主性と創意工夫の可能性の探究

3. 英国の福祉政策との比較研究

   英国のローカル・ガバナンス改革と福祉政策の動向を参照しながら、日本の地方自治制度への示唆を得る国際比較研究

 

【活動の方針】

 学術研究者、実務家、市民が協働し、理論と実践を架橋する開かれた研究プラットフォームとして、持続可能で包摂的な地域社会の構築に貢献します。

​ローカル・ガバナンス研究 創刊号 

2022年3月発行

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花崗岩のテクスチャ

著作等を紹介します

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『日英の孤独政策

官民連携のあり方を問う』

山本隆・山本惠子 編著
桜井智恵子・山本耕平・八木橋慶一・北見万幸共著

光生館 192ページ

2024年3月刊行 ISBN 978-4-332-60105-0

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『ニューミュニシパリズム

グローバル資本主義を地域から変革する新しい民主主義』

山本隆・山本惠子・八木橋慶一共編著

明石書店、288ページ、

2022年5月26日刊行、ISBN978475035366

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『福祉社会デザイン論 ―日英の都市』

山本隆・山本惠子・八木橋慶一・正野良幸

敬文堂、186ページ、

2021年3月20日刊行、ISBN 978-4-7670-024-6

花崗岩のテクスチャ

​3つのミッション

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​ミッション1

ローカル・ガバナンス研究会

企画と定例会の開催

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ミッション2

機関紙

『ローカル・ガバナンス研究』

の発行

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ミッション3

国際セミナーの企画と開催

​メンバー

ローカル・ガバナンス研究会

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